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「リン。きみはどう思う」
ぼくは首だけで振り返り、背後にいるきみをみた。きみはお姫さまのように身体の前で両手を重ね、無表情のまま天空モニターを眺めている。
「くだりませんね」
そうしてひとこと、きみはぽつりと小さな声でいった。ブロンドの髪は風にゆれ、一本一本が意思を持つようにたなびいている。きみの独特な日本語の表現にも、ぼくはすっかりなれていた。念波を使えと何度いっても聞かない。学習意欲はすばらしいものだと思うし、彼女が日本語を学びたいという気持ちを無下にはできない。それでもまちがいは指摘する。
「く、だ、ら、な、い、だよ」
「くだりませんじゃダメですか」
それも一度きり。諦念するのは決まってぼくの方だった。やれやれ、とため息をついて苦笑する。きみはぼんやりとうつろな目で、子どもを殺された男性の表情をずっと見上げていた。
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