プロローグ

6/9
462人が本棚に入れています
本棚に追加
/1465ページ
  「ひとは、かんたんに死ぬのですね」突然、きみの声が悲しく震えた。髪色と同じ、金色の大きな目に、ぼくの姿が滑稽に映っている。 「そうだね。この場合、殺したのも同じ人間だけど」  とりとめのない会話の中に、隠された意図があることを汲み取った。ぼくはきみに向きなおり、愛しいひとの笑顔をイメージしていう。 「だいじょうぶ。あかねは死なないさ」 「だといいですね」さっきまでの無表情は氷のように溶け、優しげな目元とゆるんだ口元がいつものきみを作り上げる。ぼくはこくりとうなずき、ふたたび天空モニターに目を走らせた。 「定点カメラに切り替えたまえ」  無数に浮かぶモニター。正六角形のそれにはひとつひとつ、異なる映像が終わることなく流れている。ダイヤモンドのように美しい輝きは、星の光を浴びてなおもきらめいていた。
/1465ページ

最初のコメントを投稿しよう!