プロローグ

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   次の瞬間、さきほどまで男性の悲愴な表情が映し出されていた巨大モニターは反転し、いつもの顔といつもの飛行音がぼくを陶酔させる。 「もう次に入ったのかい」  耳をつんざくメロディーに負けないよう、ぼくは声を大にしてきみにきいた。「まだです。もうすぐ境界を突破するはずです」よどみなくすらすらと脳内に響くこの感覚は、きみの放つ念波だった。どんな喧騒の中にいても、どんなに遠く離れていても、念波は正確に発信者の意思を伝える。そこに言語という障害はない。ぼくときみが意思の疎通をはかれるのは、ひとえにこの念波によるものである。 「予定よりずっと早い」  感心しながら、ぼくはレールを見つめた。光の筋を白い空に軌跡として刻みながら、彼女たちのレールは次の次元を目指して翔ていく。これがうるさいのなんのって。パチンコ屋の方がよっぽど静かだ。十六和音の着メロが耳元で鳴り響いている感じ。
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