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まだ一時間前だが、操縦席(コックピット)には、副機長の岩井総太(いわいそうた)が待っていた。 「早いな。」 「ええ、初めての国外線ですから。」 * * * 青田徳子(あおたのりこ)は、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。 空港関係者寮なので七時に起きれば間に合う。 徳子はカップラーメンにお湯を注ぎ、三分の間に顔を洗って歯を磨く。カップラーメンをすすり、汁を捨てた。髪をセットしスーツを着る。軽く化粧を済ませ、バックを持った。ヒールを履きドアを開ける。 「お~さぶ。」 冷たい風が吹き付ける。 徳子は鍵をかけ、身を縮めて寮の階段を降りた。 軽自動車の鍵を開け助手席にバックを置く、運転席に乗り込みエンジンをかけた。「ブォォォーン」という大きな音が出る。 (そろそろ、買い替えたいな。) そう思ったが、そんな金は無い。徳子はギアを『B(バック)』に入れ、四十三番の駐車場から出ると、ギアを『D(ドライブ)』に入れ替え、出発した。 この辺りは交通量が少ない。スムーズに行けば三、四分で着くはずだ。 徳子は今日大型旅客機(ジャンボジェット)でニューヨークへ飛ぶ。初めての国外線での客室乗務員(キャビンアテンダント)である。少し早いが徳子は飛行機にのりこんだ。 「あら、新人さん?」 乗務員長(チーフアテンダント)の小田百合子(おだゆりこ)が呼び掛けてくる。 「あっはい、新しく国外線に配属されました。青田徳子です。よろしくお願いします。」 「青田さんね。」 小田は優しく微笑みかけてきた。 (良かった。優しそうな人で…。) すると、操縦席(コックピット)の方から機長と副機長が出て来た。 「え~私が今回、本機の機長を担当します、瀬戸です。」 仲間や先輩達が礼をしている。 「そんでこちらが、副機長の岩井。」 「あっえ~、今回国外線は初めてですが…あっえっ、よろしくお願いします。」 「よろしくお願いします。」 小田が返した。 * * * 乗務員への挨拶を終え、明広は操縦席(コックピット)に戻った。 「おまえ硬くなりすぎだよ。」 「いや、はい。」 「ほらっもっと肩の力ぬいて!」 「はい。」 「よ~し。」 時計を見ると出発まであと三十分ある。 そろそろ乗客が乗ってくる頃だ。 * * * 駒木田秀平(こまきだしゅうへい)は周りの喧騒で目覚めた。もう七時半だ。 (あぁ、また寝てしまった。)
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