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いつの間にか二百十六便は滑走路(コース)Dについていた。
(なんだ、一目瞭然じゃないか。二百十六便は大型旅客機(ジャンボジェット)だ)
二百十六便が徐々に加速していく。
『二百十六便(ツーワンシックス)離陸しました。』
「おい、大丈夫か?あれ。」
品川が心配そうに、今二百十六便が飛び立った方角を眺めている。
「どうした?品川。」
秀平は少し気になったので聞いてみた。
「いやぁ、今Dから飛んだやつん所にシラサギの群が…。」
海の近くの羽田では、カモメかもしれないが、こちらではいろんな鳥がバードストライクの原因となる。
『二百十六便(ツーワンシックス)、バードストライクのため、そちらに戻ります。』
「あちゃ~、やっちまったか…。」
秀平はマイクを持ち、二百十六便に無線を入れる。
「現在、滑走路(コース)A、Dは使用中のため、滑走路(コース)Cから着陸後、速やかにターミナルへ寄せて下さい。」
『了解。』
秀平は無線を切り替える。
「え~二百十六便、上海行きの大型旅客(ジャンボジェット)機がバードストライクのため、着陸します。至急、代えの機体を手配して下さい。」
『了解しました。』
「あ~あ~、これ苦情がうるさいぞ。面倒臭いねぇ~。」
品川が言ったが、秀平も同感だ。
「何言ってんのよ!苦情受けるのは、乗務員(キャビン)や人事の人達なのよ!」
なぜむきになっているのか良く解らないが、それこそ面倒臭くなりそうなので、流しておいた。
それなのに品川が聞く。
「栗林さん。何そんなむきになってるんすか?」
(あ~。こいつは…。)
「うるさいわねっ!」
栗林は今にも殴りかかる勢いだった。
「うわぁっ!」
品川は少しビビったようだ。これで懲りるかと思ったがさすが品川。何事もなかったかのように、秀平の方にやってくる。
「何なんだよなぁ~。」
「知らん。」
「なっ…おまえまで。」
「私はね!!」
急に栗林が話し出した。
「私は最初受付だったのよ!」
「……。」
「それだけ…。」
一瞬、十五人いるはずの塔内が静まりかえったようなきがした。
そろそろ十時になる。
* * *
「こちらへどうぞ~。」
徳子は次々と来る客を案内している。
(今年はお客さんが多いような気がする。)
長期にわたる円高で海外旅行客が増えている。こちらとしてはうれしいことだ。
「あの~すみません。」
髪にパーマの入った女性が声をかけてきた。
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