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「はい、何でしょうか?」
「これ、墜ちない?大丈夫?」
出た。こういう客は毎年いるのだ。
(そんなに、心配なら乗るな!)
と、思うのだがそんなことは言えない。
「大丈夫です。安全には、万全を期しておりますので。」
「でも~。さっき一回飛んだのが戻ってきたでしょ~。何かあったんじゃないの?」
「あれはバードストライクと言って、エンジンに鳥が入ってしまったので戻ってきたんですよ。」
「それがこの飛行機で起きたら危なくないの?」
(しつこいな!)
徳子は少し頭にきたが、かろうじて耐えた。
「あれはあくまで安全確認ですのでほぼ問題ありません。」
「でも、『ほぼ』なんでしょ。」
おばあちゃんが「ほぼ」をやたらと強調して言う。
(じゃあ乗るんじゃねぇ!!)
と心の中で怒鳴りつけた。
「お客様はお車を運転されますか?」
「ええ。」
「失礼ですが、それで事故を起こされたことはおありですか?」
「一回だけ…。」
おばちゃんは指を一本立てて見せた。
ここで無いと、言ってくれればやりやすかったのだが問題は無い。
「でも飛行機の事故は車の事故よりも、遥かに低い確率なんですよ。」
「あくまで確率でしょう。」
「お客様はニューヨークに何をされに行くんですか?」
「留学中の息子に会いに…。」
「それでしたら、低い確率の事故を避けるために息子さん会うのをやめるのは息子さんがかわいそうですよ。」
「…そうですね。お手数おかけしました。」
「いえいえ。」
と言いながら
(本当だよ。)
と思う。
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