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「なっ!?」
品川が突然声をあげた。
「栗林さん!これを!」
「何?」
少しイライラした様子で品川のコンピューター画面(ディスプレイ)を覗きこむ。
「えっ?」
栗林の驚いた様子に秀平も気になって覗いてみた。
『成田国際空港管制センターの諸君へ。
我々は飛行機を利用しない国民の集まりである。
我々国民の納めた税金で空港を建設しているが、
我々にとってはとんだ無駄金である。
よって我々は、税金の返却を求める。
速やかに[十兆円]を用意しろ。
用意が完了した場合は、下記のアドレスにメールを送れ。
・・・・・.jp
尚、このアドレスはメールの受信と同時に破棄される。
我々は警察に通報されることを、拒まない。
しかし、空港の運航予定(ダイヤ)は乱すな。
これが守られない場合、そちらの二百三十二便は堕ちることになる。
これらのことを二百三十二便に伝え、下記の暗号回線への接続を要求しろ。
・・・・・・・
尚、この回線も使用後は破棄される。
税の被害者より。』
「じっ十兆円!?」
思わず叫んでしまった。品川も硬直している。
栗林は少し怒りながら言った。
「何が税の被害者よ!私だって図書館使わないわよ!」
このままいくと栗林が暴れだしそうなので、秀平が執り成した。
「いや、それは要求のために適当につけた理由ですから。」
「それにしても、十兆円ってなんなの!?ふざけてるんじゃないの!!」
「まーまーまーまーまー……とりあえず通報しましょう。ね?犯人も通報していいって言ってるんですし。」
「いや、まず社長と二百三十二便(ツースリーツー)に連絡よ。駒木田君!内線繋いで!」
「はい!」
秀平は受話器を取り、社長室の一番を長押しした。
二、三秒後に電話の向こうで呼び出し音が響く。
『はい。』
「あっ!国際空通の社長さんですか?私(わたくし)管制センターの者ですけども。」
『そうだが……。いったい何だね?そんなに慌てて。』
「大変です。二百三十二便が乗っ取り(ジャック)されました。」
『ジャック?ジャックって[乗っ取り]のジャックか?』
「はい。航空機乗っ取り(ハイジャック)です。」
『なっ!?それで、犯人の要求は?』
「十兆円です。」
『ちょっ[兆]?十兆円なのか?』
「そうです。『兆』です。」
『ばっ馬鹿な、そんな額払えるわけないじゃないか!』
「では、警察に……。」
『まっ待て、私がそっちに行くそれまで待ってくれ。』
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