彼の名前

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朝遅刻して教室のドアを開けると ユノの姿があった。 「真面目だな」 昨日の事があって やっぱり悪い奴じゃないと思った。 夏実チャンの事大切にしてるし・・・ でもあの顔の傷が気になる。 「ジェジュンー今日俺、居残りー」 ユチョンは 机に伏せて泣きそうな声を出す。 「頑張れよ、ユチョン」 朝、雨が降っていなかったのに 午後急に降り出してきた。 雨は帰る時まで降っていた。 「はぁ・・・」 傘は持ってないし、避けるものさえない。 もうこの際走って帰ろう! と、思った瞬間腕を掴まれた。 振り返るとそこにはユノがいた。 「傘ないのか?」 相変わらず暗い声で心臓に突き刺さる。 でも僕は何故かその声が好きだ・・・。 「あ、あぁ。雨降ると思わなく――」 「濡れるだろ。貸してやる」 ユノは傘を開いて僕に渡してきた。 「ユノが濡れ・・・」 もうそう言った時には ユノは1歩前に出て、 わざとか知らないけど濡れていた。 「もう濡れてる」 「風邪ひいちゃうよ!一緒に入ろ?」 「・・・」 ユノは 何も言わず雨の中を走って行った。 まだ僕の心臓はドキドキ言っていて 雨音も聞こえない程だった。 何故か回りは桃色に見えて 視界までおかしくなった。 「ユノ・・・」 そう無意識に囁いて 傘の取っ手を握りしめた。
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