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私はそれを理解できているつもりだ。
けれどだからといって納得もしているとは限らない。
「ですがキャロル。
その叱るべき当人であるお父様とお母様は忙しく、わたくしの相手をしている暇などありません」
「そ……それは」
私はべつにそれに腹を立てているわけではない。
むしろその逆で、私はお父様とお母様を心から尊敬している。
国の責任を背負う、ということがどれほど大変で、どれほど辛いものなのか、まだ経験が浅はかである私にも大体は理解ができる。
でも2人は私の前で、弱音を吐いたことや、不安な顔を見せたことは一度たりともない。
私に話をしても、どうしようもないことなのかもしれないが、人というものは弱っているとき、必ずといっていいほどぼろが出てしまうものだ。
けれどあの2人は、自分の弱みなど表に一切ださない。
ただ一人の娘である私にさえもだ。
それがどれほどすごいものなのか、それはこの城にいる人間になら誰でも感じることができるだろう。
だから皆、キャロルの用に、誠意をつくして働いてくれているのだと、そう思う。
「そ、その関しましては、ベルティユ様の方も『申し訳ない』と何度も何度も悲しい顔をしておられました」
「それはよいのです。
わたくしの方に届いた手紙の内容でも『今月も食事会はできない』と何度も謝られてしまいました」
「そうでしたか……。
これでもう4カ月目ですね」
「ええ。そうですね」
キャロルに言われて、2人とそんなにゆっくり話ができていないことに気づく。
私たち家族は、月に1、2回3人が一部屋に集まって3人だけで何気ない話をしながら食事をとるという決まりがある。
決まりだといっても、誰かが強制した行事なのではなく、この日だけは、仕事のことを忘れて、娘との時間を過ごそうと始めたものらしい。
会話の内容はほとんどが私の身の回りで起きた出来事を話す。というなんとも面白味もない話だ。
でも私の話を聞いて微笑んでくれる2人の顔がとてもうれしくて、私は食事を忘れてずっと喋り続けてしまい、お母様に注意されてしまう。
そんな普通すぎる風景でも、私たち3人にとってはとても貴重な時間になるのだ。
でも最近、その食事会をしている暇もないほど2人は仕事に追われている。
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