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「仕方のないことです。
それに、この間この城で開かれたパーティーでは、お父様とお母様の元気そうな顔を見ることができました。わたくしはそれだけで満足です」
「ですが、お二方は来客のお相手に忙しく、あまりリリィ様とお話になられなかったような気がします」
「確かに、寂しくないといったら嘘になるでしょう。でも、だからと言ってわたくしがわがままを言って2人を困らせるわけにはいきません」
「はい。わかっております。
ですから、その為の私たちです。
なにか不便なことや、御不満を感じたのならば、すぐに私たちに申してください。リリィ様のために、私たちは全力を尽くします」
私を不安にさせないようになのか、普段のおどおどした様子からは見られないキリっとした顔つきをみせるキャロルなのだが、やはりなんだかぎこちない。
それのせいか、泣きながら「リリィ様は私が守りますー」と大きな怪獣と取っ組み合いをするキャロルの姿が頭の中に浮かんできて、つい笑みがこぼれてしまう。
「くすっ。まあ、それはとても頼もしいですね」
「あー! し、信じてませんね」
「いえ、信じていますよ。
キャロルはとても頼りになる子ですから」
「リリィ様は知らないんです!
私は最近、4枚までしか持たせてもらえなかったお皿を、5枚も持てるようになったんですから!」
「ぷっ、ふふふ」
そんな小さなことで、小さい胸を盛大につきだす彼女に、ついにこらえられなくなってしまう。
「うわあああんっ。
笑わないでくださいぃ~」
「ご、ごめんなさい。
キャロルがあまりにも可愛いものだから……」
「うぅ~……」
「こほん」
まだニヤける口元を必死に閉じ、平常を装う。
「話が随分と飛んでしまいましたね。
たしか、キャロルがわたくしのことを叱るか叱らないか、そんな話をしていたはずです」
「は、はい。申し訳ございません」
「………」
ひょっとして、彼女は謝るのが癖になって来ているのかもしれない。
「リリィ様?」
「まあよいでしょう。
このお城には今、私を叱ってくれる人が一人もいません。それはとてもまずいことなのではないですか?」
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