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「ぅ……そ、それは」
「マルブランク家の名に恥じぬ立派な娘に育てる。それもあなたたちに任せられたお仕事です」
「は、はい……」
「ですからほら、わたくしはあなた方に叱るべき時には叱ってもらわないといけないのです。そうでないと、わたくしは非行に走ってしまいますよ」
「それは困ります!!」
「そういうわけです。なので、よろしくお願いしますね」
「き……肝に銘じておきます」
「はい。…………あら?」
一通りの話が終えたタイミングをまるで見計らったかのように、グゥゥーという遠慮がちな音が静まりかえった廊下に響く。
「はわわわわわ」
しまった。と顔を真っ赤にしてお腹を押さえこむキャロル。
「くすっ、そういえばもうそんな時間でしたね。きっとアーシアが食事を用意して待っていてくれているはずです。行きますよキャロル」
彼女に謝られてしまうより早く、行動に移す。
「あ、は、はいっ」
彼女の横を通り過ぎ、そのまま去っていく私の後ろを、ちょこちょこと追いかけてくる。
そんな彼女の姿を見計らって、自分の歩幅を狭める。
そうすると、次第に先導していた私との感覚が狭まり、最後には2人が横に並んで歩くことになる。後は私が彼女の歩幅に合わせて歩けばいいわけだ。
目的地に到着する時間はこちらの方がかかってしまうが、彼女が私の歩幅に合わせて歩くより、ずっと安心できる。
それに、ゆっくりこうしてキャロルと並んであるく時間が、私は大好きだったりする。
「今日はどのような本をお読みになられていたのですか?」
最初は、私の横を並んで歩くという行為が緊張することらしく、話なんてしている余裕などなかったけれど、最近ではその緊張に慣れてきたのか自分から私に話しかけられるようになっってきたみたいだ。
私は彼女とこうして歩くたびにそんな何気ない進歩を実感すると同時に、とても嬉しく思う。
だから私はこの時間がたまらなく好きなのだ。
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