Lily(リリィ)

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「人間の本能に関する書です」 キャロルの問いかけに対し、私はさっきまで自分の読んでいた本の内容を思い出し、答えていく。 「本能……ですか?」 「そうです。生きているすべてものには、必ず本能というものがあるのは知っていますね?」 「はい。なんとなくは」 自信なさげに答える彼女の不安そうな顔。 「難しく考える必要はありません。 生きる権利を得たものならば必ず、この本能というものを持っています。これは生きていく上で、必要不可欠なものです。 そうですね……いうなれば、生きようとする力、でしょうか」 本の中に書かれていた文脈を簡潔にし、それを彼女に伝えていく。 「力……ですか」 「キャロルだって、無意識に使っているものなのですよ」 「えっ? 私がですか?」 「はい。アーシアが以前、キャロルは夜中おトイレに行くのを怖がり、起こされると言っていました」 「はわわわっ、アーシアがリリィ様にそのようなことをっ」 「べつに恥ずかしいことではありません。 昔、人間の天敵であったヒョウやオオカミは夜行性で、主に夜に活動していました」 「はい……」 ふむふむ、と私の言っていることを理解しようと、一所懸命に眉をひそめ考えるキャロル。 「夜の暗闇を怖いと感じる者は、安全な所でジッとし、夜の暗闇を怖いと感じない者は、夜に出歩き、彼らに襲われ死んでいった。つまり、生き残って来れた人のほとんどは、夜の暗闇を怖いと感じる本能を身につけた人々でなのす」 「はあ……」 「本能というものは遺伝していくものです。ですから、キャロルが夜の暗闇を怖いと思うことは、普通のことですよ。夜の暗闇を怖いと思わない子供などきっといないのですから」 「……リリィ様も、夜が怖いですか?」 「ええ。とっても怖いです」 「えへへ……」 キャロルは私の返答が嬉しかったらしく、頬を赤く染め、緩みきった顔をする。
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