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「あっ、わ、私は子供じゃありませんよー!」
と思ったら今度はなにか私の発言が気に障ったのか、さっきまで緩みきっていた頬をふくらませる。
「ふふっ」
まったく忙しい子だな……と思わず笑みがこぼれてしまう。
「うー!」
「あっ、ごめんなさい。今のはあなたが子供じゃないということに笑ったわけではないのです」
「本当ですか……?」
ああっ、もうどうしてこの子はいちいちつい微笑んでしまうような、可愛らしい顔をするのだろう。
「ほ、本当です」
しかし……彼女は誰がどう見たって子供だというのに、どうしてそんなに強がるのだろうか。
子供であることは、べつになにも悪いことではない。
「キャロルが子供なのだろうが大人なのだろうが、そんなことは関係ありません。わたくしはあなたを心から信頼しています。それだけで十分ではありませんか? 心から信頼している者が、いつもそばにいてくれる。これはとても幸せなことです」
「幸せ……?」
「ええ。わたくしは今、すごく幸せですよ」
「わ、私も幸せです!」
「あらあら、ではわたくしたちは今、同じ気持ちだということになりますね」
「はいっ」
ニカっと笑うキャロルの顔を見て、やっぱりこの子は笑顔が一番似合う。
そして、そんな他愛もない会話をしていると時間というものはあっという間で、食堂への扉はもう目の前に見える距離まで近づいてきている。
扉の前には、1つの人影。
「アーシアっ!」
それに気がついたキャロルが、その人影に向かって手を振り、かけ寄っていく。
そんな彼女のかける後ろ姿を見て、私は幸せだ、と再び実感してしまう。
こんな日々がいつまでも続けばいいと、そう願わない日は1日もない。
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