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「あっ、よいことを思いつきました。
今日は、ここに皆を呼んで」
「先ほど、使用人たちに昼食の時間をとらせたばかりでございます」
姫様よりも先に、先手を打つ。
ここのテーブルや椅子は、一級貴族の者に対して作られたもの。
そこに私たち使用人が、姫様と同じテーブルや椅子を使って食事をとるなど、許されるべきことではない。
「そうですか……」
そのせいで、姫様に悲しい顔をさせてしまうことは、十分わかっていたはずだ。
「はぅ……リリィ様……」
わかっていたはずなのに……私もキャロルも、姫様のこととなると、とことんダメになってしまう。
「ですが……私とキャロルは、まだ昼食をとっていません」
国の秩序と、姫様の笑顔どちらか一つを選べと言われれば姫様の笑顔を選んでしまう。
私たちはそういうダメな使用人なのだ。
「まあ、では、一緒にどうですか?」
姫様の顔にパッと光が差し込んだのを見て、私は安心する。
「よろしいのですか?
姫様が私たちの様な者と食事をおとられになるなど……」
「わたくしがそうしたいのです。
わたくしの単なるわがままだと思って、仕方なしに付き合っていただきませんか」
「そんな……」
そんな言い方は、あまりにも卑怯だ。
「そんなにかしこまらなくても良いのです。
姫だといっても、名ばかりのものでまだまだただの小娘です」
「そんなことありません!」
横から慌ててキャロルが訂正をする。
「リリィ様はだからです!
私たちは、リリィ様だからこそ、こんなにも懸命にお仕えしているのです」
「ふふ、ありがとうキャロル」
姫様はたぶん、キャロルが必死にお世辞を言っているものだと思っているのだと思うが、私はキャロルに大いに賛同する。
私はあまり、感情を表に出すのが得意ではない。
だから姫様に自分の気持ちを正直に伝えることのできるキャロルを見ていると、つい羨ましくなってしまう。
長年お仕えしつづけていると、どうも自分の行動が全て義務的になってしまうのだ。
「食事というものは、皆で食べた方が美味しく感じるものですよ」
「はい。おっしゃる通りだと思います」
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