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それは普段の姫様を見ていれば重々に伝わってくる。
「お菓子だって、一人で食べるのと一緒に食べるのとでは、まったく違います。
ですよね、キャロル」
「キャロル……」
想像したくもないものが、一瞬頭の中をよぎる。
「はわっ!? リ、リリィ様!?
それは2人だけの秘密だとあんなにも……」
「まあ……そうでした。
ごめんなさいアーシア。
このことは、秘密でお願いします」
「………」
呆れて言葉がでないというのは、まさしくこのことであろう。
どうやら私の想像は、見事に的中してしまったみたいだ。
一番話してはいけない相手に話してしまい、さらには秘密にしろと……姫様は、いったいどこからどこまでが本気なのだろうか。
「アーシアっ!
その……そのっ、ねっ!?」
秘密がばれてしまった時の人間の反応っていうものは、本当にぎこちがない。
「ウォルター伯爵様が、クッキーをくれたの! そ、それでね、リリィ様にって……」
キャロルの言っていることは、きっと半分以上が正しいことだ。
間違っている……嘘をついている場所を指摘するとするならばたぶん、“リリィ様に”のところ。
あのお方のことだ。
おおよそ“リリィ様と一緒に”と、そう言ったところだろう。
どうしてこうもみんながみんな、キャロルを甘やかしてしまうのだろうか。
……でも、キャロルが姫様と一緒にお菓子を食べたことを、今から姫様と一緒に食事をとろうとしているものが攻め立てるのは、少々おかしいものがある。
「キャロル」
「はいぃっ!」
「その話については、また後でゆっくり話しましょう。今は姫様の食事の準備が先です」
それに今は、キャロルへの喝入れよりももっと優先させなければならないことがある。
そうやっていつもキャロルを強く叱れない私自身も、彼女を甘やかす人の中に入ってしまっているに違いない。
「あ、は、はい!
リリィ様! 今すぐに準備の方をいたしますので、座ってお待ちください」
パタパタと部屋の中へと入っていき、自分と同じくらい背丈がある椅子をゆっくりと引いていく。
「ん~」
ここで素直にキャロルがひいた椅子に座ってくれればいいのだが、そう簡単には座ってはくれない。
それが我が国の姫様だ。
「良いことを思いつきました。
わたくしも一緒にお手だ」
「ダメです!!」
「姫様は座っていてください」
そして姫様の提案を、いい終わる前に断るのが、私たちなのだ。
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