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リリィ様もアーシアも、見守るだけで手を出すようなことはしない。
2人とも私を待ってくれているんだ。
心の中で、頑張れ、頑張れって。
私にはちゃんとそれが聞こえている。
表情をあまり変えないアーシアは、みんなに勘違いされがちだけど、私はアーシアがとても優しいことを知っている。
さっきだって、お皿を運んでいる私を心配して声をかけてくれたし、それに私が夜怖くてトイレにいけないときは、ずっと一緒にいてくれるし……それをリリィ様に言っちゃったのは、ちょっと酷いけど。
でもでも!
リリィ様も夜は怖いっていってたし、おかしいことじゃないって言ってたよね?
リリィ様もアーシアも、他のみんなも、すごくすごーく優しくて、毎日が楽しい。
このお城で働かせてもらえることが、私は幸せです。
だからだから、私はいっぱいいっぱいみんなにお返ししなきゃいけない。
リリィ様は気持ちだけでいいって言ってくれたけど、やっぱりなにか形にしたい。
それで、いつかみんなを驚かせたい。
それが私の当分の目標だ。
「お……お待たせ、しましたぁ」
無事にリリィ様の横までたどり着くことができ、そっとテーブルの上にお皿を置く。
「すごいです。
よくやりましたよキャロル!」
「えへへ」
たったそれだけのことなのに、自分のことのように喜んでくれるリリィ様。
アーシアに比べたら、私なんて何もしてないくらいなのに。
「頑張りましたねキャロル」
「わわっ……」
まさかアーシアまで褒めてくれるとは思わなかったから、びっくり。
「でも、もうちょっと早く運べるようになれるといいですね」
「あぅ……はい」
やっぱり注意もされてしまった。
これでこそアーシアだ。
「最初から何事もうまくなどできるわけがないのです。頑張るのですよキャロル」
「は、はいっ!」
リリィ様にそう言われると、不思議なくらいやる気が出てくる。
明日はサラダと、そしてスープを運んでみよう。
「では、キャロルが一生懸命運んでくれたスープです。温かいうちにいただきましょうか」
「はい」
「はいっ」
リリィ様の言葉に、私たちは2人そろって返事をする。
「キャロル。私は椅子を持ってきますのでちょっと待っててください」
「あ、私も手伝う」
そっか。
もともとここは、偉い人たちが集まってご飯を食べる部屋だ。
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