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真夏の窓側の席は、とても暑い。
日差しは容赦なく私の体をガンガンに照らし、皮膚を焦がす。
カーテンというものを使えばいいのだろうが、なに分、この学校のカーテンはとても分厚い素材でできている。
閉めてしまえば、貴重ともいえる微量な風をさえぎってしまう可能性が高い。
つまりここは、我慢するしかないようだ。……と、退屈な授業の中、ペンを回しながら窓の向こうの景色を楽しむ。
この時期に、窓側の席を選択したのが間違いだったのだ。
好き好んでここの席を選んだわけではないが、かといって座りたい席というものもない。
「どこでもいい」と、そう伝えたらここになってしまったのだ。
べつに文句やいちゃもんをつけたいわけではない。
誰かを責めるわけではなくただ単に、ここの席は失敗だったと、ただそれだけのことだ。
「えー、ですからここは……」
数学の教員が黒板に数式を並べていく。
数式なんていうのは、仕組みより量だ。
どんなに細かく説明されたって、それが理解できなきゃ意味がない。
“こうなったらこうなる”
そんな単純なやり方で十分なんだ。
公式させ覚えればいい。
あとはとにかく解く。
何問も、何問も、あてはめて、解く。ようはパズルのみたいなものだ。
そうやって覚えこませればいい。
「どうしてこういう公式になるのか」とか、そんな解説を細かく説明されたって、余計にややこしくなってしまうだけじゃないか。
……と、そんな考えの私は、全て解き終わってしまったプリントを眺め「もっと問題数を増やしなさい」と心の中で、教員の背中に呟く。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴るまで、あと30分はある。
目を瞑って時間が経つのを待つにしても、この暑さじゃとてもそんな気分になれない。
そもそも、昨日は早く寝てしまったので眠気なんてものはちっとも襲ってこない。
いつもなら自分で教科書の先へ進んでしまうのだが、さすがにこれ以上差がついてしまうのは少々キツイものがあったりする。
「はあ…」
これはもう……耐えるしかない。
「………」
そう決心したその時、ふと一人の少女の顔が頭の中に浮かんでくる。
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