杏雫の価値

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唇を離した真奈は、憂いを帯びた表情で信じられない発言をしてきた。 「エッチ、しよっか?」 「はいぃい!?」 「だから、エッチだよ。杏雫ちゃんばっかりズルいもん。」 いや待て! 杏雫は彼女だ。そういう事をするのは普通だろ? でも真奈は妹だ。 そういう事をするのは絶対におかしい! 「どうしたの?早くしようよ。」 「真奈、もっと自分を大事にしろ。」 「どういう事?大好きなお兄ちゃんへの気持ちを押さえ込んで、どっかの男とつきあえって事?ヤだよ。そんなの……」 「……」 真奈の態度から、今話している事は嘘じゃないのはわかった。 だが、俺にはやっと付き合うことが出来た杏雫っていう彼女がいるんだ。 「俺には、杏雫がいるんだぞ。」 「何年も杏雫ちゃんの気持ちに気付かなかったくせに。」 「それは……」 「私なら、杏雫ちゃんよりわかりやすいアピールしてあげるよ?だから、『真奈』にしなよ。」 2人しかいない真奈の部屋に、いつもとは違う真奈の声が響いた。
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