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俺は、杏雫の涙を拭いてやったが、拭いたそばからどんどん涙があふれてくる。
「なぁ杏雫、もしよかったらその約束教えてくれないか?」
「……いや。」
「はぁ?」
「勇也が思い出してくれないと意味ないもん。あたしは一瞬たりとも忘れたことなかったのに……」
口調こそ強がっていたが、杏雫は未だに泣いていて、綺麗な顔をくしゃくしゃに歪めていた。
杏雫の態度から、その約束がすごく大事なのはわかったんだが、本気で思い出すことができない。
付き合って?
そんな簡単なことじゃない気がするな……
「ひどいよぉ。勇也ぁ……」
「ごめんな。」
「悪いって思うなら!思い出してよ!早く!」
「ごめん……」
「あたしには、勇也しか、いないのに……」
そういって杏雫は、俺にもたれ掛かりながら泣き崩れた。
そんな杏雫に、平謝りしかできない自分がいやだ……
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