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「なんで起きちゃったの?」
真奈は、沈んだ表情を隠すようにしながら俺に質問してきた。
なんでって、キスしたくなかったから?
「なんか、顔に近づく気配を感じたから。」
「それ、私。」
「そっか。」
「……お兄ちゃん。キスして?」
「パス。」
パスって……
自分でも何いってんだと思ったが、反射的にこんな最低な言葉を発していた。
今日は真奈が彼女なのにな。
「……何で?」
「何でだろうな。」
「鈍感馬鹿。早く向こう行ってきなよ……」
「向こうって。」
「あっち。」
そう言って真奈が指さしたのは、俺の部屋の窓の向こう側。
杏雫の部屋だった。
「真奈、お前。」
「やっぱり、杏雫ちゃんが好きなんでしょ?」
「……」
「早く行け。馬鹿。」
「サンキュ……」
俺は、真奈に背中を押されて杏雫の部屋に向かった。
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