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壁が語りかけてきたなんて事は無い。
ただでさえ薄暗い裏路地。俺の心はその声を聞いた途端に暗黒に染まったね。
「いやぁ、奇遇だねえ。こんな辺鄙な場所で会うなんて……」
一歩後退り、ぶつかったそれを恐る恐る確認する。確認するまでもなく俺にはわかっているのだが。
身の丈2mはある巨漢。鼻の下にバナナみたいにぶら下がった髭。
そして、岩のような筋肉質な体を包む、鉄鎧。
国家治安部隊のイワン・ゼブラコフ。残念だが顔見知りだ。
「変質者が出たと淑女から通報があってな」
にこりと笑い、俺を見るイワン。
目の前には裸足にロングコートで必死に全身を隠す男。
いや、こいつにとっては俺がいるというだけで十分に違いない。
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