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いつものように新聞配達を終わらせて帰っている途中、ジョギング姿の50代ぐらいのおじさんが道路の脇で痛そうな顔をして座り込んでいた。
通り過ぎようとも思ったけど困ってそうなので自転車を止めておじさんの顔を覗き込みながら声を掛けた。
「おはようございます。どうかされましたか?」
「いやぁ運動不足だから走ってたんだが右足首を挫いて転んでしまってね…」
おじさんは笑いながら答えているけど痛さで顔がひきつっている。
まだ少し早い時間で周りには誰もおらず無視して帰る事も出来ずに再び話し掛けた。
「携帯ありますけど誰か呼びますか?」
「それはやめて欲しい…。私にも色々と立場があってな…」
おじさんには呼べない事情があるようで困ってしまい置いて行くワケにもいかずどうしようかしばらく考える。
「家はこの近くですか?」
考えた挙げ句、時間もあるのでおじさんを送ろうと思った。
「この先にある高い塀で囲まれた家に住んでいるが…」
おじさんの言った家は新聞配達の帰りに通る家。
「自転車には乗れますか?」
「乗れはするが?」
「僕も帰り道で通りますので家まで送ります。カッコ悪い自転車だけど誰も見ていないから乗ってください」
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