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帰り道だった事とそれほど遠くはないから自転車に乗せて送ろうと思ったけど、おじさんは僕の事を考えてか自転車が嫌なのか遠慮がちに答えて来る。
「だが君が困るだろう…」
「僕は新聞配達で走るのは慣れてますから。それに困っているのに置いては行けませんよ」
そう言っておじさんの近くに自転車を寄せて無理矢理立たせるとハンドルを掴ませた。
立たせる時に痛がっていたけどハンドルを持たせるとおじさんは諦めたようにサドルに腰を掛けた。
「では行きますよ? 漕がなくていいからちゃんと運転してくださいね?」
おじさんの準備が終わると有無も言わさず自転車を後ろから押し始める。
初めはふらついていたけど慣れてからは足をペダルから下ろしてブラブラさせて笑いながらハンドルを操るおじさん。
楽しそうだった。
僕が言った事を鵜呑みにして全く漕いでくれなくて、重たいおじさんの乗った自転車を後ろから必死に押して行った。
おじさんが座り込んでいた場所から2キロほど離れた場所に高い塀に囲まれた大きな屋敷がある。
そこに行くまでには緩やかな登り坂だったり狭い道だったりと大変だったけど何とかたどり着いた。
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