始まりの朝

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「ただいま」 アパートへ戻ると静かに入る。 新聞配達に加えて足を挫いたおじさんを家に送った事で、いつもより遅く帰ったけど妹はまだ起きてはいなかった。 汗だくで濡れた服をすぐに着替えて狭いキッチンへ行く。 朝食の準備の為だ。 僕の名前は酒井 登(ノボル)。 小さい頃から頭が悪く高校もヤマが当たってたまたま合格し2年生にも何とか進級出来たぐらいだ。 身長は165センチと平均で、ガッチリしているけど運動音痴。 頭の形がデコボコで丸刈りをしていた小学校の頃はジャガイモと呼ばれていた。だから今は少し伸ばして隠している。 顔は不細工。性格も根暗でモテた事なんて一度もない。 頭は悪いし顔も悪いし運動もダメダメ。ハッキリ言って僕には良いところはないけど唯一自慢出来るものがある。 それは料理が得意な事。 小学校の家庭科の授業で料理を作り、手先が器用な事もあって僕の包丁捌きや初めて作った魚のムニエルを先生や周りの友達が誉めてくれた。 それが凄く嬉しくて、その日から毎日、母さんを手伝い料理を教えて貰った。 中学に入ると図書館で調べたり料理の本を買って来ては一人で作って家族に食べて貰っていた。 将来は調理師や料理人になって働きたいと思っている。
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