第1話~少女とモビルスーツ~

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そんな中、荒野の真ん中を一機のMSが歩いていた。 ネイビーブルーにファントムグレーといったダークな色のMSは、昼間の明るい荒野では浮いて見える。 (私は…何処に行けばいいんだろう) MSには、黒髪の少女が乗っていた。 この少女には記憶が一切ない。両親、自らの名前すら、殆ど覚えていない。 ただ、一つだけ覚えていることがある。 自らの乗る『RGMー79Q ジム・クゥエル』というMSは、何よりも大切なものだということ。 どうして私がこのMSに? なんでこの子(MS)が大切? …そういったことは思い出していない。 (私、何かを思い出そうとして旅をしているのかな…) よく分からないが、少女はそう思うことにした。 ともかく今は安全な場所が欲しい。 「へっへっへ、いいMSじゃねえか…」 (……?) 岩陰からぞろぞろとMS『DTー6800 ドートレス』が出てきて、少女のジム・クゥエルを囲む。 「俺たち困ってんだよねぇ。それ、くれねぇか?」 ドートレスのパイロットと思われる男の言葉に悪意を感じたが、この状況で断ることはそうそう出来なかった。 仮に抵抗するとしても、丸腰のジム・クゥエル一機で、少なからず武装したドートレス複数を相手にするなど無謀と言える。 少女はジム・クゥエルに両腕を上げさせる。 「へへ、物分かりが良くて助かったぜ」 続いてハッチを開き、コクピットから出る。 「おいおい、パイロットは女の子だぜ!」 「しかもなかなか可愛いじゃねぇか…」 「なぁ、この子マワそうぜ?」 「おっ、いいねぇ!」 「最近ムラムラしてんだ、ヤらせてもらうとしようかぁ!」 ゲラゲラと、ドートレスのパイロット共の下劣な笑い声が響く。 少女は為すすべもなく苦痛と屈辱を味わうことを覚悟した。
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