第1話~少女とモビルスーツ~

4/7
前へ
/122ページ
次へ
一方、上空を飛ぶ一機のMS。 一見すると戦闘機のようにも見える。 「ふい~、やっぱり空は気持ちいいねぇ」 可変式MS『SVMSー01 ユニオンフラッグ』を駆る、この少女の名は『アユミ・カザハラ(18)』。エスペランサ治安維持班の一員だ。 周囲のパトロールがてらフライトを楽しむという、マイペースな性格である。 「おや?あれは…」 アユミが地面を見ると、ネイビーブルーのMSが多数のMSに囲まれているのが見えた。 「ちょっとこれはマズいんじゃない!?」 アユミは無線をつなぎ、治安維持班の本部に連絡を入れる。 「こちらアユミ・カザハラ!見たことないMSが、ならず者らしきドートレス群に囲まれてる!至急援護を求む!」 無線を切り、そのMS付近へと降下した。 地上ではすでに男共の手によってジム・クゥエルから少女が引きずり降ろされようとしていた。 「さぁ観念しなァお嬢ちゃん」 「!」 脚を踏ん張ってみても、掴まれた腕を振り回してみても、力及ばなかった。 「どれ、まずは味見といくか…」 少女の首筋を男の舌が蛭のように這い回る。 「ぃゃぁ…」 少女が恐怖と不快さにより声を漏らす。 「キェアアアシャベッタァァァァ!」 「色っぽい声出してくれるじゃねぇか!」 「ますます興奮してきたぜェ!」 さらに男共は湧く。 いよいよ男共が少女に寄ってたかろうとしたその時、 「お楽しみの所悪いねぇ!」 「なにぃ?」 上空から声が聞こえた。 見上げると、何やら飛行する影が見える。 「鳥か?」 男共は目をこらす。 よく見ると戦闘機のようだ。 「飛行機か?」 そしてその機体が付近に降下し、変形して着地する。 「モビルスーツだぁ!」 少女を引きずり降ろそうとした男が、空から舞い降りた機体に夢中になっている隙に、少女は渾身の力で男を押した。 「お!おわああぁぁぁ…」 MSのコクピット辺りから落下したら、怪我どころじゃ済まないだろう。 (当然の報いよ!) 少女はふんと鼻で笑い、ハッチを閉じた。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加