第3話~その名はクアドリガ~

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「お嬢さん、『コルベットブースター』の調子はどうだい?」 カーネルが下からクゥエルに通信を送る。 コルベットブースターは飛行ユニットをパラグライダーのように扱うもので、これを使えば推進力の低いMSでも重量の許す限り飛行が可能になる。 「さっぱりわかりません!」 「重心をうまく傾けて上昇下降、旋回するんだ」 「なるほど、わかりません!」 「やれやれ…」 クゥエルは一心不乱に大空を舞う。悪い意味で。 アユミはクゥエルが攪乱した敵をすかさず叩く。 「よし、こっちもやりやすくなった!」 アユミはさらにペースを上げ、よそ見しているトムリアットを撃つ。 「んー、なんだか敵が少なくなったような…」 アユミの言ったことに間違いはない。 実質、カーネルが最初に放ったAPFSDSに気を取られた敵が一挙に下降していったわけで。 「…来るわ」 一方、地上ではザウート、ザク・キャノン、ティエレンが待ち構えていた。多数のトムリアットが下降してくる。 「エイラ、可能な限り弾幕を…」 「~♪」 「聞いてねぇな」 ラルフがエイラに指示を出すも、エイラは大音量で音楽を聞いているため、まったく聞こえてなかった。 「ったく、めんどくせぇな…拡散弾、撃つぞ」 ザク・キャノンが撃った弾は空中で細かく拡散し、トムリアットに刺さっていく。 「ジル、あとは頼む」 「…任せて」 ティエレンは頭部を覆うように装着されたキャノン砲で、バランスを崩したトムリアットに次々と弾を当てていく。 しかし致命傷は与えない。無駄なく敵の戦力を奪い、MSへの損害を最小限に抑えて回収する…それが彼女のやり方だ。 「あとはボクが大掃除ぃ~♪」 エイラのザウートがタンクモードに変形し、ジルが撃ち残した敵を追いかけ二連装キャノンを撃ち込む。 「…敵機へのダメージは最小限に」 「~♪」 「…聞いてないわね」
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