第1話~少女とモビルスーツ~

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「ところで、見たこともねぇモビルスーツだな。誰か乗ってんのか?」 「あぁ…これに乗ってる子、記憶喪失らしいの。名前も思い出せないんだって」 「災害の影響か何かかもな…。なぁ、お前さん」 「?」 おっさんは少女に声をかけた。 「お前さんさえ良ければ、ウチの団体に来ないか?」 「え…?」 「なぁに心配いらねぇさ。さっきの奴らみたいに取って食おうとはしないさ」 「………」 少女は内心嬉しかった。 今までずっと人に声をかけられることも無かったし、『仲間』と呼べる人も居なかった。 少女は震えながら返答する。 「いい…ですか?」 「当たりめぇよ。困ってる人は放っておけんし、なにより『仲間』が増えるっていいもんだろ?」 「!」 少女は笑顔になる。 仲間という響き…今はそれだけで十分だった。 (この人たちとなら、これからどんなことがあったってやっていけそうな気がする…!) 少女は顔を上げ、声をはった。 「ぜひ、よろしくお願いします!」 「おおっ?いい声出せるじゃねえか、気に入ったぜ!おっと、俺は『ボブ・デンガー』。治安維持班の班長だ。よろしく頼むぜ!」 『ボブ・デンガー(36)』は、ザクの右手を差し出す。 少女もジム・クゥエルの右手を出し、互いに握手させた。 「さて…なんか疲れたな。アユミ、本部に連絡入れてガウの迎え頼んでくれ」 「こっからそう遠くないでしょうが!歩いて帰りなよ!」 「チッ、つれねぇな」 「ま、あたしは飛んでくけど」 「あっ!ずりぃぞ!待てコラ!」 アユミのフラッグは軽く飛び上がると、変形して飛んでいってしまった。二人のやりとりを見て、くすくすと笑う少女。 「ったくあの小娘ェ…。仕方ねぇ、俺らは歩いて帰るか。案内するぜ、俺たちの帰る所へ」 少女はエスペランサの団員と出会い、帰れる所と仲間ができた。 それと同時に、いつの間にか自然と忘れていた笑顔も、取り戻せていた。 (仲間っていいね…)
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