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「ところで、見たこともねぇモビルスーツだな。誰か乗ってんのか?」
「あぁ…これに乗ってる子、記憶喪失らしいの。名前も思い出せないんだって」
「災害の影響か何かかもな…。なぁ、お前さん」
「?」
おっさんは少女に声をかけた。
「お前さんさえ良ければ、ウチの団体に来ないか?」
「え…?」
「なぁに心配いらねぇさ。さっきの奴らみたいに取って食おうとはしないさ」
「………」
少女は内心嬉しかった。
今までずっと人に声をかけられることも無かったし、『仲間』と呼べる人も居なかった。
少女は震えながら返答する。
「いい…ですか?」
「当たりめぇよ。困ってる人は放っておけんし、なにより『仲間』が増えるっていいもんだろ?」
「!」
少女は笑顔になる。
仲間という響き…今はそれだけで十分だった。
(この人たちとなら、これからどんなことがあったってやっていけそうな気がする…!)
少女は顔を上げ、声をはった。
「ぜひ、よろしくお願いします!」
「おおっ?いい声出せるじゃねえか、気に入ったぜ!おっと、俺は『ボブ・デンガー』。治安維持班の班長だ。よろしく頼むぜ!」
『ボブ・デンガー(36)』は、ザクの右手を差し出す。
少女もジム・クゥエルの右手を出し、互いに握手させた。
「さて…なんか疲れたな。アユミ、本部に連絡入れてガウの迎え頼んでくれ」
「こっからそう遠くないでしょうが!歩いて帰りなよ!」
「チッ、つれねぇな」
「ま、あたしは飛んでくけど」
「あっ!ずりぃぞ!待てコラ!」
アユミのフラッグは軽く飛び上がると、変形して飛んでいってしまった。二人のやりとりを見て、くすくすと笑う少女。
「ったくあの小娘ェ…。仕方ねぇ、俺らは歩いて帰るか。案内するぜ、俺たちの帰る所へ」
少女はエスペランサの団員と出会い、帰れる所と仲間ができた。
それと同時に、いつの間にか自然と忘れていた笑顔も、取り戻せていた。
(仲間っていいね…)
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