自動○○

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『あっれぇ~?』 「ドアの真ん前で何してるんだ? 通行の邪魔になってるぞ」 『いや、開かないんだよー』 ガラッ 「? 開いたぞ」 『おろ? まさかの引き戸か、盲点』 「何で気付かないんだ?」 『いやいや、見た感じじゃ分かんないことよくあるって』 「だとしても開かなかったら、分かるだろ」 『ちょっとドアを信じてみようと思って』 「無機物を信じるな」 『いやいや、信じる者は報われるのだよ』 「……もう、いい」 『何をあきらめたんだー? あきらめたらそこで終わりだぞー?』 「諦めたのはツッコミで、終わるのはお前のボケだろう。願ったり叶ったりだ」 『むー』 「どうでもいいからとにかく退け。さっきから邪魔になってる」 『あ、そうだ。トイレ行きたかったんだよ』 「ゴーイングマイウェイか、お前は。せめて返事をしろ」 『一緒に行こー』 「無視か……はいはい」 ―――― ―― 「お前、何回水流すんだ。無駄使いするな」 『違うよー。勝手に流れちゃうんだよ』 「あぁ、センサーのやつか」 『うん。ちょっと影になっただけで、反応するんだもん』 「便利なようで不便だよな、それ」 『うん。何でセンサーにしたのかね? レバーとかスイッチでいいじゃん。あ! 衛生に気ぃつかってるとか?』 「そんなの気にするような奴が公衆トイレ使うと思うか?」 『むむ、謎だねぇ』 「ただの無駄だろう」 『あ、無駄って言えば、最近は便座が自動で上がるやつあるよね』 「あー、知らずに入るとちょっとびびるな」 『アレ、一々下げなきゃいけないから急いでるときめんどくさいよ』 「上げるのを面倒だと思った人もいるんだろ」 『ほんの二、三秒じゃん。どんだけ切羽詰まってんの? つか、アレ何気に手より遅いから、余計に時間かかるし』 「確かにな。見てるとちょっと焦れったくなる」 『うん。あれこそ無駄だよね』 「そうだな。……それからそこは、手動のドアだ」 『おろ? ホントだー』 「覚えろよ」 『いやいや、やっぱり扉を信じてみようと……わかる?』 「お前に一度で覚えるなんて高等技術を要求するのは無謀だってことがわかった」 FIN
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