もしも世界が……

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『うっわ、なんじゃこれ、きっも』 「いきなり煩い……何見てるんだ?」 『絵だよ。何か身長も顔も服もおんなし人がずらーっと並んだ絵』 「あぁ、これは確かマグリットって人が描いた絵だな」 『すごいなー、皆こっちにガン飛ばしてるよー』 「題名は『収穫の季節』だったか?」 『帽子の高さまで一緒だね。これ描いた人ペアルック好きなのかな?』 「ペアって次元じゃないだろコレ……て言うか今の説明に対して相槌打とうとか思わないのか?」 『ん、ごめん。興味無くて聞いてなかった』 「何で謝って貰ったのにとどめ刺された気分なんだろうな?」 『泣かないでよ、C。撫で撫でしてあげるから』 「いらない」 『全面拒否か、傷つくわぁ』 「それより、何でまたこんな絵見てたんだ?」 『何となく目に止まったから。これキモくね?』 「捉えようによっては面白い絵だぞ。風刺画みたいでな」 『ふーしが?』 「世間とかを皮肉るような絵のことだ。これは画一的な世界を彷彿とさせる」 『かくいつてき?』 「全てが統一されて変化や個性が無いことだ」 『んー、要はこの絵みたいに同じ人間しかいない感じ?』 「まぁ、そんな感じだな」 『うわ、それってすっごいつまんなさそう』 「どうかな、考えの違いから起こる戦争とかは無くなるだろう。すごく、平和な世界なんじゃないか?」 『えー、でもそれ絶対つまんないってー』 「どうしてそう思う?」 『……話すこと無くなるじゃん』 「……?」 『だって自分と会話したいとは思わないでしょー? 話したところで、全部お互い知ってることじゃん。つまんないー』 「……成る程」 『人と話すのは色々疲れるけど、楽しいから好きー。Cと話すのは新しい事がたくさん分かるから大好きー。やっぱり自分じゃない人とお話ししたいよ』 「お前は至極稀にちゃんとした事を言うな」 『至極稀ってどういうことだ、ゴラァ』 「誉めたんだ」 『欠片も誉められた気しないよ。馬鹿にしてるの? 負の方向にしか考えられないから、取り敢えず一発殴っていい?』 「許可すると思うか?」 『ケチー』 「そういう問題じゃない」 FIN
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