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続けて言う。
私との議論のから、彼女は生物学的変容を理論化し、今回の新規研究計画というものも、これに関するものである、と。
「覆水、盆に返らず」とは正にこの事であるが、ここで彼女を引き止めておくべきだったのだ。
確かに、軍部が関係する研究に携わっていれば、学徒出陣から免れる事が出来るという自己保身の意図はあった。
だが、弁解が許されるならば、俄かには信じ難い彼女の理論が成功を収めるかという学究欲、そして何より、恋慕する彼女から離れたくはないという感情が存在したのである。
何れにせよ、私は彼女との同行を了承し、「ヒサユキ」は誕生してしまったのである。
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