現世

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たとえばそれは僕だ。ただの人であり男性だ。面倒を格別嫌い避ける傾向にあるが、それ以外はいたって普通な、目の前で声を荒らげる体格のいい男くらい普通な社会人二日目の若者である。そしてここは会社の玄関口なのだった。 男性は見かけからして裕福ではなさそうである。たぶん彼の人生にも楽しいことやときがあったのだろうが、それを思わせないくらい彼の頭は禿げ上がっている。あんまりきれいに削がれているので、自ら剃っているのかとも考えたが、側面に毛の面影が少々残っているから、やはり禿げているだけのようだった。そんな彼は我が商社の商品に文句をつけているのだった。
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