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「でも残念……」
「それ以上話すな」
僕は彼女の細い両腕を掴んだ。そして体を抱きしめ、顔を近づけてキスをした。柔らかいのに、無機質なキスだった。それはたとえば僕のように。
顔を離したとき、彼女は泣いていた。彼女は僕を突き飛ばして明後日へ走っていった。風が僕の頬を慰めるように撫でた。
次の日にも彼女はあの道路脇に立っていた。暗い顔をしていた。ここにいることがイヤでイヤでたまらないといった顔をしていた。それでも彼女は僕に質問をした。
「君のために生きる私はなんのためにここにいるの?」
「おれと話すためだ」
「でも残念。君は被刑者なのでしたー」
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