ヒッチハイク

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今森を下る方に飛び出たら、確実にあの変態一家の視界に入る。 選択肢は、唯一死角になっているトイレの裏側に隠れる事しかなかった。 女の子を気遣っている余裕は消え、俺達はトイレを出て裏側で息を殺してジッとしていた。 頼む、止まるなよ。そのまま行けよ、そのまま… 「オイオイオイオイオイ、見つかったのか?」 カズヤが早口で呟いた。 キャンピングカーのエンジン音が駐車場で止まったのだ。 ドアを開ける音が聞こえ、トイレに向かって来る足音が聴こえ始めた。 このトイレの裏側はすぐ5m程の崖になっており、足場は俺達が立つのがやっとだった。 よほど何かがなければ、裏側まで見に来る事はないはずだ。 もし俺達に気づいて近いづいて来ているのであれば、最悪の場合、崖を飛び降りる覚悟だった。 用を足しに来ただけであってくれ、頼む…俺達は祈るしかなかった。
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