高菜秋斗の日常は、下手をしても簡単には崩壊しない。

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初春、春を知らせる様に鳥が目覚まし時計の代わりに囀ってくれている朝。 チュンチュンと、少しばかりな耳障りな音の正体を知るために俺は目を開けた。 目の前には白い、代わり映えしない天井。 だが、何故かは知らないが違和感がある。何と無く腰から背中にかけて捕縛感を感じるのは気のせいじゃない。 ゆっくりと纏っていた毛布を自分の身体から剥ぎ取ると、その捕縛感の正体があらわになった。 「全く、何時から一緒に寝てたんだか。おい、起きろ。な………おい………ありす………」 「………うぅ………ふぇ? お兄ちゃん………朝ご飯出来てる…から……一緒に………お休みなさい…………Zzz………」 「言おうとしてる事があやふやで何を伝えたいのか分からないよ。ホラ、抱き着くのはやめて早く起きろ…」 俺がありすと言っているこの少女は実の妹の高菜ありす。漢字表記は高菜亜莉雛だ。現在俺に絶賛抱擁添い寝中の俺と同じ高校一年生だ。 あともう一人兄弟がいるのだが、紹介は後ほど。 今はこの妹をどうにかしないと気が済まない。 「ありす………、朝ご飯食べたい………」 「うぅ………お兄ちゃん。白雪姫のお話知ってる…?」 「ああ。毒リンゴを食べた白雪姫は王子様のキスで目覚めるんだろ?」 「うん、だから私におはようのキスをしてくれたら起きてあげよっかな~」 「その前に毒リンゴを食べたらキスくらいしてやるよ」 「むぅ………、お兄ちゃんとキスできるなら………この命、捨てても………」 と、見るからにブラコンコンな我が妹とは弟を含めて三つ子関係にある。 だが、この三つ子関係には色々と秘密があるが、それはまた今度という事で。 まあ、それは置いといてだ。 今にでも苦しみを顔に出そうとしていて、目をつむっているありすをどうにかしないと、そろそろまずい。 「ありす。兄ちゃん腹減ったから………手料理食べたい」 「………あっ、ごめんねお兄ちゃん。急いで支度するから。柚樹起こして来て?」 「おお、分かったけど。まだ起こしてないの?」 「うん、先にお兄ちゃんを起こそうと思ってお兄ちゃんの寝顔見てたら……その………つい………ごめんお兄ちゃん!」 「寝てしまったと。まあいいや、柚樹起こしてくる」
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