高菜秋斗の日常は、下手をしても簡単には崩壊しない。

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そそくさと俺の部屋を出ていくありすを尻目に、俺もその後続いて部屋を出た。 目指すは隣の弟の部屋。 しなやかに足音を立てて目的の部屋の前に移動して、コンコンと乾いた音を立ててノックする。 「………………返事は無い。まだ寝てるかな…」 頭をかきながら片手でドアノブを回して部屋に入る。 そこに居たのは、まだベッドでぐっすりと寝息を起てて寝ている弟。 名前は高菜柚樹。兄妹の中で一番下の弟だ。そんでもって、ありすが長女、俺が長男。 ………ただ生まれてきた順番が俺が一番最初ってだけなんだけどね。 「まあ、なんにせよ起こさないと始まらないよな。おーい、起きろ~」 そう言いながら、柚樹が頭まで被っている布団をゆっくりと剥ぎ取る。 するとあらわになったのは、男としては長めの漆黒の黒髪に大きなパッチリ目。同い年とは思えない程の中性的で幼い容姿の柚樹が目をパチパチしていた。 「むぐ………あ、兄さん………おはよぅ………」 「うん、おはよう。今日も可愛いな、ちゅーしていいか?」 「ちゅー? ………はぅ、だ、駄目だよ! 兄さんからかわないで…」 俺の放つ8割方本気の冗談を真に受ける我が最愛の弟、柚樹。これでも列記とした男だ。 もう、恥ずかしそうに頬を赤らめる柚樹カワユス。 「冗談だよ。ホラ、飯だって。ありすが」 「うぅ………、さっきので目が覚めちゃったよ………」 ふて腐れながらも渋々ベッドから腰を上げて後ろに着いてくる柚樹。 俺も早めに行動して柚樹の部屋を出てリビングに急いだ。 「あ、姉さん。おはよ………ふぁあ…」 「おはよう柚樹。欠伸してないで早く座って? お兄ちゃんも」 「ああ、分かってる」 半ば強引にいつもの席へと急がされ、腰を下ろすとすぐにありすが茶碗とお味噌汁、そして今朝のオカズを俺と柚樹の前に並べていく。 「えへへ、兄さん召し上がれ?」 「おう、いただくよ……」 俺の横に立って笑顔を少しにやけさせながら、味の感想を待っているありす。実はこれ、日課。 「姉さんって、本当に兄さんが大好きだよね…」 「えへっ、分かっちゃう?」 「俺は柚樹が大好きだけどな…」 「そ! それは………困るよ兄さん」 やべ、困惑する柚樹が愛おしい。
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