高菜秋斗の日常は、下手をしても簡単には崩壊しない。

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静かながらも、涼しさを身に感じながら新しい通学路を歩く。 前にありす、真ん中に柚樹、後ろに俺が。 「三人一緒のクラスだといいね~」 ゆっくりと背伸びをするようにしながら、柚樹がそう呟く。 「うん、それが一番だけど………結構、生徒数多いってお母さんから聞いたし……」 それに比べてマイナスな考えなありす。 「おいおい、此処で沈んでどうするんだよ。父さん達だって遠くで頑張って仕事してんだから、俺達は俺達で気合い入れていかなくちゃなんねーの。おーけー?」 「兄さん………。うん、うん! そうだよね!」 160も無い身長の身体をぴょんぴょん跳ねさせて、満天の笑顔で柚樹が答えてくれる。 ちくしょー、喰っていいかな。 「そうだけど、私………お兄ちゃんと一緒のクラスが良い………」 「はいはい、俺もありすと一緒のクラスになりたいよ」 言いながら、そっとありすのサラサラとした髪を撫でて少しばかり宥めてやる。 兄思いの良い妹だし、それぐらいはしてやらなくちゃバチが当たるからな。 「あ、あの………兄さん」 「ん、どうした?」 俺が万遍なく、ありすの頭を撫でていると、柚樹は身体をモゾモゾとしながら悩殺されそうな程のぎこちない上目遣いで俺を見ている。 「あ、あの………その………。実は僕も不安で一杯で………」 「…?」 「僕の頭も、さ………撫でて欲しいんだ…。だ、駄目かな…?」 「ずきゅん」 「ずきゅん? お兄ちゃんから変な音が聞こえたよ」 や、ばい。鼻血出そうな程に弟がヤバすぎる。 格好悪い姿を妹弟に見せる訳にも行かず、仕方なく後ろ向きになって熱い鼻を抑える。 「お兄ちゃん! 大丈夫!?」 慌てて俺の背中をさすってくれているありす。俺の家族はどうしてこんなに優しいんだ………! 「兄さん………具合悪いの?」 「いや、大丈夫だ。よし柚樹、いくらでも撫でてやるからな。よーしよしよし」 「わぁ、ふぁ………髪型崩れちゃうよ兄さん………!」 「ぶぅ………! どうしてお兄ちゃんと柚樹にはフラグが立って私には立たないのかなぁ」 ありすは少しばかり俺の手を煙たがる柚樹を羨ましそうにして見ながら、ただただ唸っていた。
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