0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「お嬢様、朝でございます。起きてくださいませ」
綺麗な黒髪で、右頬に黒いスペードのマークのある、タキシードを着た美青年が、屋根付きのベッドの側に立って、眠っている金髪の少女に声をかける。
「わたくしはもっと眠っていたいの……放っておいて戴けないかしら……スペード……」
「そういうわけにはいきません。本日は午前九時から世界中の貴族の皆様の集まるパーティーが開かれますので……」
「……」
スペードと呼ばれた青年は少女にそう言うが、少女は何も反応を示さない。
「お嬢様!」
スペードが大声を出すと、少女が驚いて体を起き上がらせる。
「はぁ、分かりましたわ。起きて差し上げましょう。ただし……」
「ただし?」
スペードは顎に手を当てて少女に聞き返した。
すると、少女はニヤリと微笑み、ゆっくりと口を開いた。
「わたくしを楽しませなさい。あなた達、トランプの召使いの四人でね……」
「本来は時間がないのですが、それが条件であれば……了解しました。ただ今クラブ、ハート、ダイヤの三人をつれて参ります」
スペードは一度ため息をついてお辞儀をすると、ゆっくりと少女の部屋から出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!