入学

10/10
前へ
/151ページ
次へ
―――同時刻。 レイフォンは生徒会室に連れていかれていた。 喧嘩をしていた武芸者達を一瞬で鎮めたのに目をつけられたのだ。 今現在、レイフォンの手には制服があった。武芸科のものである。 目の前にいるのは生徒会長だ。 カリアン・ロス。学園都市ツェルニを束ねるトップである。 「君には武芸科に転科してもらいたいんだよ。レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ君」 「……何の事でしょう?」 「君の奨学金はAランクにしよう。君の過去をバラされたくなければ、武芸科に行くことをお勧めするよ。」 笑顔でカリアンは言うが、目は笑っていなかった。 「僕は…普通の勉強をするためにここにきたんだ。武芸科には興味はない。」 「武芸科でも一般教養は学ぶよ。 だが、ツェルニはもしかしたら今年で無くなるかもしれない。ツェルニの所有セルニウム鉱山は一つ。 私が入学したときには三つあったが、二年に一度の学園都市対抗戦に負けてしまい、残り一つになってしまった。 今年の対抗戦には何がなんでも勝たないといけない。ツェルニを僕の代で終わらせるわけにはいかない。 僕の故郷のようなものだからね。 その為ならどんなことでもしますよ。君も利用する。 槍殻都市グレンダンの天剣授受者十二位、レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ君。」 生徒会長の真剣な目に、レイフォンは何も言えなかった。 ただ、渡された制服を握りしめるだけだった。 ―――静かになった室内に、一陣の風が吹きぬけた。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加