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ある日の光景が浮かび上がってくる。
わかってる、これは夢だ。
夢だから、はっきりとわからないんだろう。そう信じたい。
目の前にはどこか懐かしい雰囲気を纏った少女二人と少年一人がいた。
少女たちの目は涙でいっぱいで、少年は俺の方を向いてくれない。
ああ、これは別れの場面なんだと直感した。
「――これ」
少女の一人が俺に何かを手渡した。
魚のストラップ。
――どうして魚?
「目が死んだ魚みたいだから」
なるほどどうしてわかりやすいじゃないか。
この時から既に目は死んでいたんだな。
電車の発射ベルが鳴った。
ここは駅だったのかと思いつつ、俺は電車に乗った。
「――さよならは言わないよ。また会えるって信じてるから」
電車の扉が閉まると同時に、俺の意識はどこかに引っ張られた。
夢の終わり。
現実の始まり。
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