571人が本棚に入れています
本棚に追加
「5分遅刻だな。まあ今日は許してやろう。明日からはちゃんと来いよ。いいな?」
ぐいっと顎を持ち上げられ、近くに先生の顔が広がる。
男とこんな近くで見つめあっても、何も感じるものがない。
「お前、死んだ魚みたいな目してるな」
毎度のように言われ続けてきたことだが、俺の目は本当に死んでいるのだろうか。
「よく言われます」
「そうか、俺は榎本だ。ちゃんと語尾に先生をつけろよ」
「は、はあ……」
体育教師って感じがするな。
言動とか体育教師っぽい。
「ちなみに秋谷、俺なんの教科担当してると思う?」
「体育に決まってるでしょ。そんなオーラがにじみ出てますよ」
俺がそう言うと、榎本……先生が腹を抱えて笑った。
「いやあ、やっぱそうだよな! そう思うよな!」
まさか違うのか。
「もしかして音楽とか?」
「そりゃさすがにないだろ! 俺は数学だ」
「は……?」
教師ながら、こいつ何言ってんだと本気で思ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!