覚醒

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「………」 奥涯雅彦の件は病院側で揉み消したはず なぜ本田菊が知っている 焦りを見せずイヴァンは笑った。 「うーん…確か4月かなぁ。でも僕話したことないし親交も無いんだよね…。」 カルテに目を落とし本田の出方を見る。 一体何を知っているというんだ。 「彼の親族と交流がありましてね。探しておられるようだったので…病院側なら何か知っているのではと」 無表情の仮面はまだ剥がれない。 イヴァンも微笑みを剥がさない。 「奥涯先生には行方不明になろうと何しようと探そうとするような家族なんかいないはずだけど?」 無意識に冷たい声が出た。はっとした時に本田が同じくらい冷たい視線を向けていた。 「先生…何も知らないって言いましたよね?」 氷点下の声が尋問を開始し虚ろな目に射ぬかれる。 だが仮にもイヴァンは医師。 嘘は得意なのだ。 「噂でちょっと聞いただけだよー。そんな怖ーい顔しないで?それにそういうのはケーサツに行ってお願いした方が早いと思うよ?」 警察になんて冗談じゃない。奥涯雅彦が何をしていたか漏らす訳にはいかないのだ。 お互い火花を散らす勢いだったがやがて本田が折れたようだ。 ため息をついて立ち上がる。 ポケットから取り出した携帯の画面を見つめたあと踵を返す。 「今日はもう帰ります。」 「そっかあーじゃあまた来週の同じ時間にねー。」 ひらひらと手を振ったが無視された。 バタンと音を立てて扉が閉まり診察室に静けさが残る。 「本田菊…君は一体何を知ってるのかな」
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