吹奏楽部

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私は、中学では三年間、吹奏楽部に入っていた。   担当は、トロンボーンだ。     高校でも是非入りたいと思っていたが、一人で入る勇気もなく、アンケートの"興味のある部活"の欄に、吹奏楽部と書いたぐらいで、どうしようか迷っていた所だった。       そんなある日、いつものあの先生の国語の授業が終わり、教科書とノートをしまっていた時だった。     「田中、吹奏楽部に入らない?」 「えっ…」     びっくりした。 先生が、いつの間にか近くに来て、私に話しかけていたのだ。   ただでさえ人見知りな私は、かなり緊張してしまって、まともに先生の顔を見れなかった。     「入りたいけど、一人はちょっと…」 「山下も吹奏楽部に居たみたいよ」     名前を聞いて、その人物を探す。   ―山下…山下…ああ、あのコか…     「山下誘って、一緒においで」     なんだか、その言い方が授業と全く違い、優しくて可愛くて、つい首を縦に振ってしまっていた。         -放課後-   先生に言われた通り、山下さんを誘って音楽室へと向かった。     ちょうど新入生がまだあまり来ていなかったらしく、先輩達は私と山下さんを歓迎してくれた。   …もちろん、先生も居た。     すると、初めて見る素らしい優しい笑顔で、私達を迎えてくれた。       間もなく、私と山下さんは吹奏楽部に入部した。   山下さんとは割とすぐに仲良くなり、下の名前のユミで呼ぶようになった。       きっと、この吹奏楽部に入って、授業とは違う素の先生を知ってから、先生の姿を目で追うようになったんだと思う。
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