プロローグ

2/2
前へ
/39ページ
次へ
気付いた時、私は、丘の上に立っていた。なぜそこに居たのかが分からない。 学校帰りに、気分が優れなくなって…。 その後からの記憶がない。 どうやってここに来たのか…思い出そうとしても思い出せない。 「どうしたんだろう…」 一人ぽつりと呟くけど、返事はない。 この場所には、来たことがない訳ではない。 来たことがあるのは… まだ幼く物心がつく前の事だったと思う。 この丘は、父と母と三人で来た丘。 なぜ、ここに来たのだろう。 何かに誘われて来たのだろうか。 私の頭上は、夕焼けに染まるオレンジ色の空。 眼下には、小さなマッチ箱。その間の隙間を小さな車が行き交いする。 小さな人の群れ。 幼い頃同じ光景を見た。 「なぜ、ここに来たのだろう」 自分に問いかけてみた。でも、返事が返って来る訳がない。 丘の上の広大な草むらに仰向けに寝そべって、そして願った。 この世界が平和であるように、私の中もずっと平和でありますように…と。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加