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「康之お兄ちゃんごめーんっ!由香里BLの事になるとつい我を忘れちゃってーてへぺろ」
「お兄ちゃんもついうっかりーてへぺろー」
…相変わらず中の良い兄妹だな…
昔から、俺はこの二人の会話にはついていけずに仲間外れだ。
ちょっと寂しい。
「二人とも、なんか俺に用があって部屋に来たんじゃないのか?」
違うんなら、荷物の準備がしたいんだけど…
「そうそう!来週から先生になる康之の為に、お兄ちゃんスーツを買ってきたんだ!」
「え…?」
俺の…為に?
「私も大学の帰りにお兄ちゃんと合流して、一緒に選んだのよ!」
「兄貴…由香里…俺のために…ありがとう」
美形一家の中で、兄と妹と比べれば地味な次男の俺は、成人しているにも関わらず昔から仲の良い二人に疎外感を感じていた。
でも、それは杞憂だったんだ。
二人は失業した俺を今日までずっと励まして応援してくれて、今日だって俺の為に…
「じゃーん!ホストスーツーぅ」
「ちゃらららっちゃっちゃー」
某猫型ロボットの口調で由香里が見せてきたのは、教職に就く人間が着ていいスーツじゃなかった…
てか、兄貴も乗るなよ。
「あ、まだほかの色もあるんだぞ!」
「あとねー、お兄ちゃんに似合いそうなアクセサリーも買ってきたんだよー」
「…二人とも、これ、なに」
「ホスト教師の衣装だ!」
「教師がホストってなんだよ!」
「お兄ちゃん聞いて!これはお兄ちゃんの貞操を守るためなの!」
由香里と兄貴が言うには、俺が就職する東雲学園は専門用語で『王道学園』と言うらしい。
『王道学園』とは、生徒の大半が恋愛対象に男性が含まれる博愛精神を持ち、生徒会は顔で選ばれ、イケメン、美少年には親衛隊が付く。
所謂ホモ学園。
そんな獣達の中に俺のような(どんなだよ)教師を放り込むと、あっという間に尻を狙われてしまうらしい。
…卒業生の兄が言うのだから間違いないのだろう…
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