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「…でっけえ」
迎えに来た無駄に高級そうな黒塗りのベンツに乗せられ延々山道を揺られ、たどり着いたのは見上げるほど大きく豪華な門。
銃を持った門番が居ないほうがおかしいぐらいのこの門の遥か向こうには、『校舎』と言う単語がまったく似合わない城のような綺麗な建築物が聳え立っている。
「…で、俺はこの先どうすればいいんだ?」
車から降りたはいいが、門は閉じたままで中に入りようが無い。遊也さんの電話番号を聞いておけばよかったと後悔しても後の祭り。
『康之!学校についたら門を飛び越えるんだ!』
なんて、別れ際に兄貴に言われた言葉を思い出し…
「………よいっ…………しょ」
門の柵に足をかけてみるが、それ以上にっちもさっちもブルドッグ。
俺の運動能力で、見上げるほどのこの門を超えられるはずが無い。上ったとして、降りられる自信が無い。
「……………抜けない」
おまけに、買ったばかりの革靴が挟まって抜けない。
やばい、すげえ間抜けだ…!
「…何をしてるんですか」
「ひっ!」
校門の向こうから近づいてくる影に氷点下のテンションで声を掛けられ、思わず泣きそうになってしまった。
こんな派手な格好で校門に脚を挟まれて、ほんと、何やってんだ俺。
「不法侵入者は有無を言わさず警察に引き渡すことになっていますが」
「っちょ、ち、違います!俺、いや私、いや俺!俺、今日から着任…じゃなくて、ここで世話に…う、宇野です!だ!」
現れたのは、ミルクティ色の柔らかそうな髪に、春の日差しのような穏やかな雰囲気の白衣の男性。
いきなりボロが出た俺を胡散臭そうな目で見ていたその人は、軽く首をかしげ
「……………………………康之…か?」
「…………ばる兄?」
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