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「ここが理事長室だ」
「でけえ」
「昨日からずっと、東雲理事長が宇野先生が来るのを待ってましたよ」
あ、もうスイッチが入ってる。
威圧感溢れる扉をゆっくりと押すと、絢爛豪華な室内の中に遊也さんが立っていた。
「遊也さん!」
「や!………康…や…す、ゆき君なのか?」
俺の声に反応して笑顔で立ち上がった遊也さんと視線が合い、数秒の硬直。
俺を迎え入れる為であろう広げられた両手が空しく空中で停止している。
「そんな、この数日でいったい何があったんだ…そんなホストみたいな姿になってしまって…」
「えっと…先生がこの格好ってやっぱり駄目…かなあ?」
改めて自分の姿を見つめなおす。
金髪にシルバーアクセ、白のスーツ。…駄目か。駄目だな。
「…い、いや。その格好自体には問題はないんだが…」
それはそれで問題だと思う。
「何故そんなホストみたいな格好を…あの、可愛く誠実でいい子だった康之君はどうしてしまっt」
「ああ、それはもう私が言いました」
どうでもいいんだが、25にもなった男に対して『可愛い』との形容詞はどうなんだろうか。
「ちなみに理事長。宇野先生のあの格好は麻由美さんの指示です」
「…ああ……わ、私の癒しが…」
その一言で全てを理解してしまったのか、頭を抱えて遊也さんがその場に蹲る。
あああ…高そうなスーツに皺が…
「康之君…!時々でいい、また昔みたいに『おじちゃまだいしゅきー!』とお膝の上に…」
「いやです」
そんな昔々の思い出話を持ち出されても困る!
「理事長、お会いするのを楽しみにしていた宇野先生の変化にショックを受けておられるのは重々理解しておりますが、
理事長もこの後暇ではないのでさっさとお話を続けやがってください」
遊也さんの背後に気配も無く佇んでいた、眼鏡のクールな超美形秘書さんが表情筋をぴくりとも動かさず、ロボットみたいに抑揚の無い声で遊也さんを叱り付けた。
…居たのか…
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