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「ゆ…遊也さん待って!」
「どうしたんだい?」
勿論教員免許を取るときに実習はしっかりとは受けたが、教師と言っても、臨時講師みたいなものだと思っていた。
俺にそんな事が出来るんだろうか。
「俺、遊也さんが思ってる以上になんにも出来ないよ!?俺、兄貴みたいに何でも出来る訳じゃない」
昔から兄貴は何でも出来た。勉強も運動も。
周りはそんな兄貴を見てるから、弟の俺にも実力の何倍もの期待をかけた。
兄貴に負けたくなくて、どれだけ努力して自分の120%の結果を出したって、皆が望む結果の何割かにしかならない。
そうやって、勝手に期待されて勝手にがっかりされるのは嫌だ。
「康之君」
「む、無理ですよ…俺は兄貴みたいに出来ない」
「そんな事、よく知っているよ。君たち兄弟のおしめを変えたのは誰だと思っているんだい」
「じゃあ…」
「だから、君にお願いしたいんだよ。
私の知っている中で、桃真君は最も優秀な生徒の一人だ。桃真君に出来ないことは無かったし、大抵の事は人並み以上にこなすことが出来た」
「だから…」
「だから。君なんだよ。桃真君を生まれてからずっと側で見てきて、桃真君をライバルだと張り合ってきたのは康之君ぐらいのものだよ」
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