―Ⅰ―

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凍てつくような寒気が漂う――。 ここは人が通常に過ごせるような生半可な世界ではない。 氷点下五十度を遥かに下回る氷の世界。 防寒具に身を包まねば過ごせぬ程の過酷な環境だ。 ここは嘗て、暖かい気候に恵まれた南国のリゾート地であった。 この場所がそうだったとは皆誰しもが想像し得ただろうか――。 数年前、この地に核の炎が舞いあがった。 死の灰――フォールアウト....。 それは某軍事国家の指令本部に於いて、軍部と国家元首との確執が引き金となって引き起こされた。 国家に対する不満を抱いた不満分子の行き過ぎた行動により、核のボタンは遂に押されてしまったのである。 その飛ばっちりを先ず最初に受けたのが、嘗てはリゾート地であったこの場所を含める近臨諸国だった――。 ・
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