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「じゃあ、七瀬はここで何をやってたんだ?」
「寝てました!」
「見りゃわかる」
元気良く手を挙げて答えられても困る。
というか、七瀬が座ったままなものだから、立ってる俺がやたら七瀬を見下ろすような形になって、会話しづらい。
七瀬もちゃんと見上げてくれているが、首が痛くないのだろうか。
こいつは、真奈美から聞いていた以上に変な……もとい、面白い奴なのかもしれない。
「えっとですね、今日は真奈美と一緒に帰る予定だったんです」
「ここで待ち合わせしてたのか?」
「はい。今日は私がちょっと遅くなるから待ってて、って言っておいたんですけど、真奈美いなくて……」
今日は部活休みだって言ってたのに……と呟きつつ視線を宙に泳がせる七瀬。
そういえば、俺も何故か真奈美が今日部活休みだと聞いたような気がする。
そう、それは7時限目の授業が終わり、生徒会室に向かう途中の廊下ですれ違った時だ。
雑務を押しつけられることがわかっているのに行かなければいけない鬱な俺に対して、真奈美は若干スキップじみた歩き方をするくらいにご機嫌だった。
「お兄ちゃん発見!」
「なんだ真奈美か……なんだかご機嫌だな」
「うん!今日は部活ないから、すぐに帰ってあのマンガの続き買いに行くんだぁ!」
「そうか、じゃあついでに俺が読んでるアレも」
「じゃあねぇ!」
「…………」
うん、確かこんな感じの会話だった。
そして、うん、あのバカは完全に七瀬との約束を忘れてやがる……。
確かにあいつはあのマンガの続きを読みたがってはいたが、さすがに庇いきれない。
というか、今すぐにここに連れてきて土下座で謝罪させたい。
あのバカはこんな寒いところで親友を待たせてたのかよ。
七瀬は帰宅部らしいから、ざっと5、6時間は待ってるということになる。
そりゃ、眠っても仕方ない。
……いや、でもおかしくないか?
「七瀬、あいつにメールしなかったのか?」
「先輩!学校にケータイを持って来ちゃいけないんですよ?」
「…………」
こ、こいつは想像以上に変な……変な奴だ。
いや、確かに校則には書いてあるけど……。
真奈美と仲良くなるのも理解できる。
まぁ、良い奴なんだろうけどさ。でも、真面目な表情で俺を諫める七瀬に若干引いてる俺を、誰も責めはしないだろう。
七瀬はこのご時世には珍しいタイプの人間だった。
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